ルールは5つです
従業員10名ほどの会社で、11年ひとりIT担当をしています。
セキュリティの話を書きます。ただし「やるべきことリスト」ではありません。うちで実際に決めているルールと、それが守られているかどうかの話です。
社内で決めているルールは、この5つです。
| # | ルール |
|---|---|
| 1 | パスワードはクラウドのツールで管理する |
| 2 | 不審なメールは開かない。間違って開いたら報告する |
| 3 | USBメモリは持ち込み禁止 |
| 4 | 私物の端末は業務に使わない |
| 5 | 退職するときは、PCを所定の場所に戻す |
多くありません。これだけです。
正直に書きます。守られています
「小さい会社のセキュリティルールなんて、どうせ守られていないだろう」と思われるかもしれません。
私もこの記事を書く前、そういう前提で考えていました。「守られない話」を書くつもりでした。
でも、改めて振り返ると——守られています。 5つとも。
これは自慢ではありません。理由があるからです。そして、その理由は「社員の意識が高いから」ではありません。
守られている理由:守らなくても済むようにしてあるから
一番分かりやすい例が、USBメモリです。
ルールは「持ち込み禁止」です。ただ、それだけではありません。
会社のPCは、USBメモリを認識しないように設定してあります。
つまり——ルールを破っても、何も起きません。 挿しても使えないのです。
「持ち込まないでください」と言い続けるのと、「挿しても使えない」のとでは、まったく違います。前者は人の記憶と善意に頼ります。後者は頼りません。
これが、うちのルールが守られている本当の理由です。
守ってもらうのではなく、破れなくする。
5つのルールは、それぞれ同じ考え方で作っています。
5つのルールを、仕組みの側から見る
① パスワードは、覚えなくていいようにした
「パスワードを使い回さないでください」——これは、言うだけでは絶対に守られません。 人は覚えられないものを使い回します。当然です。
だから、覚えなくていい仕組みにしました。パスワード管理のツールを会社で導入し、そこに入れるようにしています。
覚える必要がなければ、使い回す理由もなくなります。ルールを守る努力が要らない状態にしてあります。
② 「開くな」ではなく「開いたら報告しろ」にした
不審なメールのルールは、実は2段構えです。
・不審なメールは開かない
・間違って開いたら、報告する
後半が重要です。
「開くな」だけだと、開いてしまった人は隠します。 怒られるからです。隠されると、私が気づくのは被害が出てからになります。
「間違って開いたら報告」とすることで、開いたこと自体を責めないと宣言しています。報告してくれれば、その時点で対処できます。
人は間違えます。 間違えないルールではなく、間違えたときに被害を小さくするルールにしました。
③ USBは、認識しないようにした
先ほど書いた通りです。ルールと設定をセットにしています。
④ 私物端末は、そもそも会社のものにつながらないようにした
「私物のスマホやPCを業務に使わない」も、言うだけでは守られません。自分のスマホでメールを見るほうが楽だからです。
ここも仕組みで対応しています。詳しい方法は書きませんが、私物端末からは会社のデータに届かないようになっています。
「使わないでください」ではなく、「使えません」です。
⑤ 退職時のPCは、手順にした
「PCを返してください」ではなく、「所定の場所に戻す」という手順にしています。
戻す場所が決まっていれば、迷いません。返却されたかどうかも、その場所を見れば分かります。
退職時の手続きは退職時のITチェックリストに詳しく書きましたが、ここでも「人の判断」を減らす方向で作っています。
一番ヒヤッとしたのは、人の行動でした
なぜ、ここまで仕組みに寄せているのか。
11年で一番ヒヤッとしたのは、機械の故障ではなく、人の行動だったからです。
具体的には書きませんが、悪意はまったくありませんでした。普通の人が、普通に便利なほうを選んだ結果です。
そのとき理解しました。
注意しても、また起きる。 便利なほうを選ぶのは、人として正常だから。
だから、注意する代わりに、便利なほうを塞ぐことにしました。それが今の5つのルールです。
ルールを作るとき、順番を変えました
この経験から、ルールを作る順番を変えています。
以前:ルールを決める → 守ってもらう → 守られない → 注意する
今 :ルールを決める → 「守らなくて済む仕組みはあるか」を先に考える
仕組みで防げるなら、仕組みにします。 人に頼るのは、仕組みで防げないものだけです。
うちの5つのうち、純粋に人に頼っているのは②の「開かない」の部分だけです。そこも「開いたら報告」で受け止めています。
10人だからできること
正直に書くと、この方法は規模が小さいからできている面があります。
- PCの台数が少ないので、設定を1台ずつ確認できる
- 全員の顔が見えるので、ルールの理由を直接説明できる
- 例外を作らずに済む(「役員だけ特別」のような穴がない)
大きな会社では、同じことをやろうとすると承認や調整が必要になります。10人の会社は、決めたらその日にできます。 それは小さい会社の数少ない強みだと思っています。
まとめ
- うちのセキュリティルールは5つ。全部守られています
- 守られているのは、守らなくても済む仕組みにしてあるからです
- 「守ってもらう」のではなく「破れなくする」——これが基本の考え方です
- 「開くな」ではなく「開いたら報告しろ」。人は間違えるので、間違えたあとを設計します
- 一番ヒヤッとしたのは人の行動でした。悪意はなく、便利なほうを選んだだけです
- だから注意する代わりに、便利なほうを塞ぐようにしました
もしあなたの会社で「ルールが守られない」と悩んでいるなら、社員の意識の問題ではないかもしれません。
「守らなくて済む仕組みはないか」——そこから考え直すと、ルールの数はたぶん減ります。 うちは5つで足りています。
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