「線引きしましょう」という記事にするつもりでした
ひとりIT担当の記事を読むと、よくこう書いてあります。
便利屋にされないよう、線引きをしましょう。
対応範囲を明文化しましょう。
正しいと思います。実際、私も以前の記事で「やらないことを決めてください」と書きました。
ただ、自分のことを正直に振り返ると——
11年間、基本的に断っていません。
線引きのルールも、明文化していません。この記事は、その状態で11年やってきた人間の話です。
何を頼まれるか
うちに来る依頼を並べると、こうなります。
- プリンタの紙詰まり
- Excelの使い方
- 備品の発注
- 写真の加工
パソコンの話は、実は半分もありません。
備品の発注と写真の加工に至っては、IT担当の仕事とは言えないでしょう。でも来ます。そして、やっています。
なぜ自分に来るのか
理由は分かっています。
「パソコンに関係ありそうだから」
これだけです。
写真の加工は、パソコンを使う。備品の発注は、ネットで注文する。だから「あの人に聞けばいい」となる。 悪意はありません。10人の会社では、それが自然な流れです。
なぜ断らないのか
「断るべきだ」という意見は、もっともです。それでも私が断ってこなかったのは、断っても、いいことがないからです。
① 断っても、誰もやらない
大きな会社なら「それは総務の仕事です」と言えます。でも10人の会社に、引き受けてくれる別の部署はありません。
私が断れば、その仕事は宙に浮きます。 そして結局、誰かが困ったままになります。
② 断る交渉のほうが、時間がかかる
紙詰まりを直すのは、たいてい2〜3分です。
一方、「それは私の担当ではありません」と説明し、では誰がやるのかを決め、納得してもらう——これには2〜3分では済みません。
やったほうが早い。 身も蓋もありませんが、これが現実です。
③ 頼まれごとから、情報が入ってくる
これは後から気づいたことです。
「Excelの使い方が分からない」と言われて見に行くと、その人が普段どんな作業をしているかが分かります。
- どのファイルを使っているか
- どこで時間を取られているか
- 何を不便に感じているか
この情報は、会議では出てきません。 呼ばれて初めて分かることです。
そして、IT担当が改善を考えるときに一番必要なのは、まさにこの情報です。頼まれごとは、社内を知る手段でもありました。
「便利屋」で、悪いのでしょうか
こう書くと、「都合よく使われている」と見えるかもしれません。
でも、11年やって思うのは、これです。
小規模企業のIT担当は、そもそも守備範囲が定義されていない。
「情報システム部の業務範囲」のような文書は、うちにはありません。あるのは「よく分からないけど、あの人が詳しいらしい」という認識だけです。
その状態で「これは範囲外です」と言うのは、存在しない線を、自分で引くことになります。
それが悪いとは言いません。 引いたほうがいい会社もあるでしょう。ただ、うちの規模と事情では、引かないほうが回っていたという話です。
ただし、1つだけ違和感があるものがあります
すべて引き受けてきたと書きましたが、「これは自分の仕事ではないのでは」と思う依頼が1つだけあります。
接客です。
パソコンでも、備品でもありません。人と直接向き合う場面です。
そして正直に言うと、私は接客が苦手です。
「説明」はできるようになったのに
不思議に思われるかもしれません。以前の記事で「人への説明ができるようになった」と書いたからです。
自分でも整理しきれていないのですが、感覚としては別物です。
| 得意になったこと | 苦手なままのこと | |
|---|---|---|
| 状況 | 困っている人に説明する | 接客 |
| 相手 | 目的がはっきりしている | 何を求められるか分からない |
| ゴール | 問題を解決すれば終わり | 終わりが見えにくい |
「困りごとを解決する」ことには慣れました。 でも、それとは違う種類の対人業務は、11年経っても苦手なままです。
線は、技術かどうかでは引かれていない
ここまで書いて、自分でも気づいたことがあります。
私の線引きは「IT業務かどうか」ではありませんでした。
- 写真の加工 → IT業務ではない。でもやる
- 備品の発注 → IT業務ではない。でもやる
- 接客 → IT業務ではない。そして、しんどい
つまり基準は、「自分にできるか、向いているか」でした。明文化していないだけで、線はちゃんとあったようです。
そしてたぶん、それでいいのだと思います。
同じ立場の方へ
「便利屋にされている」と感じている方に、伝えたいことが2つあります。
① 全部断る必要はありません
数分で終わることは、やってしまったほうが早いです。断る交渉のほうが高くつきます。そして、頼まれごとから入ってくる情報には価値があります。
② ただし、しんどいものは自覚してください
大事なのはここです。
すべてを平等に引き受ける必要はありません。 「これは自分にとってしんどい」というものを、自分で把握しておいてください。
明文化しなくても構いません。自覚があるだけで、限界が来る前に相談できます。
私は11年、ほとんど断っていません。それでも続けられているのは、しんどいものが1つしかなかったからだと思います。もし3つ4つあったら、たぶんもちませんでした。
まとめ
- 11年、基本的に断っていません。 線引きも明文化していません
- 断らないのは、断っても誰もやらない/交渉のほうが時間がかかる/情報が入ってくるから
- 小規模企業では、そもそも守備範囲が定義されていません
- ただし、しんどいものは自覚しておいてください
- 私の場合、それは技術かどうかではなく「向いているかどうか」で分かれていました
便利屋になっているのが、必ずしも悪いわけではありません。
ただ、何がしんどいのかは、自分だけは分かっていてください。 誰も気づいてくれません。
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