11年で一番変わったこと
2015年、私は教育学部を出た事務職でした。パソコンでできたのはExcelの関数まで。マクロは触ったこともありませんでした。
あれから11年、従業員10名ほどの会社でひとりIT担当をしています。
では、この11年で何を覚えたのか。振り返って一番近い感覚は、これです。
知識が増えたというより、調べ方が上手くなった。
これが正直なところです。順に書きます。
Excelは、少し上達しました
まず、出発点だったExcelから。
関数の範囲は広がりました。 11年前より、できることは確実に増えています。
ただし、覚えたわけではありません。
必要になったときに、ネットで調べています。
「あの関数、どう書くんだっけ」と毎回検索しています。11年やってもそうです。そして、それで困っていません。
マクロは、今も触りません
「マクロを覚えれば作業が自動化できる」とよく言われます。実際その通りだと思います。
でも、私は今も触っていません。
理由は単純で、そこまでする必要がある作業に、まだ出会っていないからです。手作業で足りているうちは、手作業でやっています。
(ただし、この判断は変わりつつあります。AIを使えばマクロも書ける時代になったからです。「覚える」必要が、そもそも薄れてきました)
できるようになったこと① パソコンのトラブル対応
これは11年で確実に身につきました。
- 起動しない
- ネットにつながらない
- 印刷できない
- 急に遅くなった
こういう相談に、慌てなくなりました。
なぜ慌てなくなったのか
原因を切り分ける順番が、体に入ったからだと思います。
その人だけ? 全員?
→ 全員なら、ネットワークかサービス側
→ その人だけなら、その端末か設定
いつから? 直前に何をした?
→ 何かを変えた直後なら、そこが原因の可能性が高い
知識というより、手順です。 そして、この手順は教科書に載っているものではなく、11年かけて自分の中に溜まったものです。
できるようになったこと② 人への説明
そして、これが一番大きいと思っています。
IT担当の仕事は、実は説明が半分です。
- なぜこの作業が必要なのか
- なぜ今すぐ直せないのか
- なぜこのサービスを導入したいのか
相手は、パソコンに詳しくない人です。専門用語を使った瞬間、伝わらなくなります。
文系だったことが、ここで効きました
11年前は「技術が分からない」ことがコンプレックスでした。でも今は、むしろ有利だったと思っています。
私自身が専門知識を持たずに始めたので、「分からない人が何で困るか」が分かるからです。
エンジニアの説明が伝わらないのは、知識がありすぎて、相手のつまずく場所が見えないからだと思います。私にはそれが見えます。自分がそこでつまずいたからです。
技術を覚えるより、これを身につけたことのほうが、日々の仕事を助けています。
一番苦労したのは「ファイルの置き場所」でした
意外に思われるかもしれませんが、11年で一番苦労したのは、技術的なことではありません。
ファイルをどこに置くか。
これでした。
一見、簡単そうに見えます。実際にやってみると、答えが出ません。
- どういう分け方にすれば、全員が迷わず見つけられるか
- 名前のつけ方を、どう揃えるか
- 誰がどこまで見られるようにするか
- 使っていない古いものを、いつ片づけるか
技術の問題ではなく、人と運用の問題です。だから正解がありません。
そして、決めても守られません
ルールを決めても、忙しい人は自分のパソコンに置きます。 「とりあえずデスクトップ」が積み上がります。
私が悪いわけでも、その人が悪いわけでもありません。目の前の仕事のほうが急ぐだけです。
この問題は、11年経った今も完全には解決していません。 少しずつマシにしている、という状態です。
11年経っても分からないこと:データベース
正直に書きます。
データベースの仕組みは、今も分かりません。
以前、基本情報技術者試験に挑戦して挫折したことがあります。そのとき詰まったのが、まさにデータベースの部分でした。正規化、SQL、テーブル設計——読んでも頭に入りませんでした。
そして11年経った今も、分からないままです。
でも、困っていません
ここが大事なところだと思っています。
11年間、データベースの知識がなくて困った場面が一度もありませんでした。
10人の会社では、システムを自分で設計することはありません。既製品を選んで、使えるようにするのが仕事です。その範囲では、必要にならなかったのです。
もし必要になったら、そのとき調べます。今は分からないままで問題ありません。
「必要そうに見える知識」と「実際に必要な知識」は、別物です。
結局、11年で身についたもの
まとめると、こうなります。
| 増えたもの | 増えていないもの |
|---|---|
| 調べ方 | 暗記している知識 |
| 切り分けの手順 | 体系的な理論 |
| 人への説明 | プログラミング |
| 判断の勘どころ | データベースの理解 |
左側は、教科書では手に入りません。 会社で困り続けた結果として溜まったものです。
そして右側は、なくても11年やってこられました。
同じ立場の方へ
もし今、「知識がなくて不安だ」と思っているなら、私も11年間ずっとそうです。
でも、こうも思っています。
覚えなくていい。調べられればいい。
11年前の私は「全部覚えなければ」と思っていました。でも実際に身についたのは、知識ではなく調べ方でした。
そして今は、AIがその調べ方をさらに速くしてくれます。
不安の正体は「知らないこと」ではなく、「調べても分からなかったらどうしよう」という恐怖だと思います。11年やってみて言えるのは、たいていのことは調べれば書いてある、ということです。
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