先に結論を書きます
私は従業員10名ほどの会社で、11年ひとりIT担当をしています。そして——
IT系の資格を、1つも持っていません。
代わりに持っているのは、簿記2級とFP2級です。どちらもIT担当になる前、趣味で取ったものでした。
そして11年やってみて、この2つが一番役に立っています。
「IT担当になったら基本情報技術者を取るべき」とよく言われます。私はそれに挑戦して、挫折しました。 その話も含めて、正直に書きます。
基本情報技術者は、途中で諦めました
IT担当になってしばらくして、「やはり体系的に勉強すべきか」と思い、基本情報技術者試験の勉強を始めたことがあります。
結果は、挫折でした。
理由ははっきりしています。
データベースのあたりが、まったく分からなかった。
正規化、SQL、トランザクション——読んでも頭に入ってきませんでした。教育学部を出た事務職で、プログラミングの経験もゼロです。土台がない状態で、いきなり体系的な理論を読んでも理解できませんでした。
そして、勉強しながらずっとこう思っていました。
「これ、うちの会社で使う場面あるかな」
挫折しても、11年困りませんでした
正直に言うと、あの知識がなくて困ったことは一度もありません。
私の仕事は、こういうものです。
- パソコンを買って設定する
- バックアップが動いているか確認する
- 契約しているサービスを把握する
- 退職者のアカウントを止める
- 「動きません」と呼ばれて対応する
データベースの正規化が必要になる場面が、1つもありません。
10人の会社では、システムを自分で設計することはありません。既製品を選んで、使えるようにするのが仕事です。
もちろん、大きな会社の情報システム部なら話は別でしょう。でも、それは私の仕事ではありませんでした。
趣味で取った簿記が、なぜ効いたのか
簿記2級とFP2級を取ったのは、IT担当になる前です。
動機も立派なものではありません。自分のお金の管理をちゃんとできるようになりたかった。 趣味の一環でした。
仕事に使うつもりは、まったくありませんでした。
ところが11年経ってみると、この2つがIT担当の仕事を一番支えていたのです。具体的に3つ書きます。
① 会社の数字が読めた
IT担当は、お金の判断を求められる立場です。
- このサービスに月いくら払っているのか
- 導入したら年間いくら増えるのか
- 今のやり方と比べて、本当に安いのか
こういう話が、常について回ります。
以前の記事で「会社が何に契約しているか誰も知らなかった」と書きましたが、あれを解きほぐす作業は、半分は経理の仕事です。請求書を読み、引き落としを追い、費用の内訳を整理する。
簿記の知識がなければ、あの作業は数ヶ月では終わらなかったと思います。
② 契約書の内容が分かった
これが想像以上に大きかったところです。
IT担当の仕事には、契約書がついて回ります。
- サービスの利用規約
- 自動更新の条件
- 解約の申し出期限
- 料金改定の条項
読めないと、判断できません。 そして読めないまま更新し続けると、気づかないうちにコストが膨らみます。
FPの勉強で、契約や約款を読む習慣がついていたのは幸運でした。技術の話ではありませんが、IT担当の実務そのものです。
③ 独立するときに役立った
私はIT担当になって3年目に独立し、今は業務委託で会社の業務を請け負っています(そのときの手続きは業務委託の確定申告、最初にやることに書いています)。
そのとき、簿記の知識が直接効きました。
自分で帳簿をつけ、毎年確定申告をする。会計ソフトを使うにしても、何を入力しているのか分かっているかどうかで、まったく違います。
趣味で取った資格が、まさか働き方を変えるときに効くとは思っていませんでした。
IT担当の仕事は、思ったより「お金と契約」です
11年やって気づいたのは、これです。
小規模企業のIT担当の仕事は、技術より「お金と契約」の判断が多い。
| 実際にやっていること | 必要なもの |
|---|---|
| サービスを選ぶ | コスト比較の力 |
| 契約する・更新する | 契約書を読む力 |
| 上司に提案する | 数字で説明する力 |
| 予算内に収める | 費用感の判断 |
技術の判断は、調べればだいたい書いてあります。 でも「うちの会社にとって、この金額は妥当か」は、検索しても出てきません。
そして、そこを判断できる人が社内にいないから、IT担当が任されるのです。
では、何を勧めるか
同じ立場の人に「資格を取るなら何がいい?」と聞かれたら、私はこう答えます。
簿記などの、実務系をおすすめします。
理由は3つです。
① 使う場面が確実にある
IT担当をしていれば、お金と契約の話は毎月来ます。使わない知識にはなりません。
② IT以外でも一生使える
会社が変わっても、独立しても、個人の生活でも役に立ちます。IT系の資格は、技術が変わると価値が下がります。
③ 未経験でも入れる
基本情報技術者は、土台がないと厳しいです。簿記は、ゼロから積み上げられます。 私がそうでした。
ただし、「資格は要らない」という話ではありません
誤解のないように書いておきます。
IT系の資格が無意味だとは思っていません。
- 転職を考えているなら、資格は評価されます
- 大きな会社の情報システム部を目指すなら、体系的な知識は必要です
- 専門性を武器にしたいなら、当然あったほうがいい
私が言っているのは、「今の会社で、兼任のIT担当を務める」という目的においては、優先順位が違うということです。
そして、資格より先にやるべきことがあります。
自社が何を使っていて、何にいくら払っているかを把握すること。
これは資格を取っても分かりません。社内にしか答えがないからです。
まとめ
- IT系の資格はゼロ。11年間、困ったことはありません
- 基本情報技術者は挫折しました。 データベースが分かりませんでした
- 趣味で取った簿記2級とFP2級が、結果的に一番役立ちました
- 理由は、IT担当の仕事が「お金と契約」の判断だらけだからです
- 資格を取るなら、実務系をおすすめします
最後にもう一度書きます。
資格の勉強に使う時間があるなら、自社の状況を1つでも多く把握してください。 そのほうが、明日から役に立ちます。
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